変更にケチ付けるおじさん

わ た し で す


いや変更そのものについては概ね歓迎です。最近ちょっとスタン追うのしんどかったですし。
ただ、問題がないわけではないと思います。



まず真っ先に思い浮かぶのが、前回のローテ変更で提示した問題が再燃するということです。

前回の変更記事
http://mtg-jp.com/reading/translated/mm/0011148/

件の記事では5つの問題が挙げられており、簡単にまとめると


1. 第3セット問題
第3セットが出るまでにプレイヤーはその環境で7ヶ月かそれ以上プレイしており、第3セットはブロックの一部だと感じられるほど似ていなければならず、その一方でプレイヤーの興味を惹けるように違っていなければならず、それを保ちつつの開発は難しいという問題

2. 基本セット問題
2種類の異なったユーザーを同時に満足させようとして、結果として基本セットには非常に奇妙な妥協が無数に詰め込まれるという問題

3. メタゲーム問題
年一回のローテではメタが硬直しやすいという問題

4. 物語の問題
1ブロック3セットでは物語の進みが遅いという問題

5. 場所の問題
1ブロック3セットだと新しい次元を切り開いてばかりで再訪できず、仮に再訪しても今度は長すぎるという問題


となります。

「1. 第3セット問題」、「2. 基本セット問題」、「5. 場所の問題」は1ブロック2セット制を変えないのであれば問題は解決しているので良しとします。
「4. 物語の問題」は、逆に物語が速すぎて尺が足りていないという問題が顕現していると思いますが、他の問題と性質が大分異なるうえに話すと長くなるので、今回は論じません。

で「3. メタゲーム問題」ですが、これは明らかに問題ありです。


■メタゲーム問題
最近だとバントカンパニーがメタゲームの40%を占めたものの、ローテが近いのもあって禁止を免れたのが記憶に新しいですが、あの手の「対処が難しいうえにカードプールが広がるごとに強化されるカード」が出て、それが環境の半数近くを占めるようになった場合、開発はきちんと対処できるのか、非常に疑問です。
例えば《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》は《集合した中隊》ほどの異常な強さはありませんが、BFZで登場して以来常にトップメタに居座り続け、他の4マナカードの存在意義を著しく奪っています。現在のPWの生存率が極めて低いが故にPWの採用率が下がっているような環境でも、ギデオンだけは様々なデッキで採用されているということがその強力さを物語っています。
ではギデオンを禁止するかというと、禁止するほど強力ではないと思います。しかし何かしら手を打たないと他のカードの存在意義を奪っているのもまた事実なわけで、ここで非常に難しいジレンマに陥ってしまいます。

また禁止というのは誰にとっても非常に損な行為で、ユーザーにとっては折角当てた/買った高額パワーカードの価値が激減するうえに使えなくなるのですから、たまったものではありません。大損です。さらに今度強いカードを手に入れても、「また」禁止されるのではないかという不安を常に抱えることになります。
一方開発にとってはスタンダードのカードを一つ潰しているわけですので、それがどんな弱いカードであろうと、禁止した時点で損です。そしてそれが強力なカードであればあるほど損失は大きくなります。加えて自身のプレイテストの甘さを露呈し、前述したようにユーザーに次なる禁止の不安も与えてしまいます。
これほど損なのですから、開発が禁止に及び腰になるのは想像に難くありません(ポンポン禁止されてもそれはそれで問題ですし)。ではどうやってメタゲームの硬直を解消するのか?解決策は無いように思います。
きちんと開発が調整してからカードを世に送り出せば禁止など不必要なので万事解決ですが、カンパニーや緑白トークンの支配率を見るに残念ながらそれは期待できそうにありません。


■ブロック格差問題
春と秋のブロックで使える期間が違うというのも気になります。
今回の変更で寿命が延びたのは秋のブロックだけで、春のブロックは1年半しか使えず、春の第2セットは秋の第1セットと比べると、使用可能期間に10カ月もの差があります。かつては使用期間が短いセットは強力に調整し、最も短いセットを基本セットにすることでバランスをとっていましたが、基本セットがなくなったので同じように調整するわけにはいきません。
仮に使用期間が短いほど強力なセットになるよう調整をしたとすると、最初のセット=外れメカニズム、最後のセット=当たりメカニズムとなり、セット間格差や買い控え、期待の喪失という新たな問題が出てきてしてしまいます。


■安易な変更問題
公式も認めているように、ローテーションのような重大な要素をコロコロ変えるという行為自体、及びそれを生み出している開発管理体制が問題です。すなわち、ローテ変更の及ぼす影響について十分な検証をしていなかったということで、プロの報奨云々もそうですが、最近のWotCは十分な反芻なしに重大な変更をしているように見えるのです。
また今回の告知では言葉巧みに「変更した」という表現を避け「元に戻した」だけと強調していますが、「元に戻すという変更」をしているわけで、これは詭弁です。もっと言うと今回の告知では、「ユーザーの意見を聞いて変更を行う」としか言っておらず、「これからはもっと考えて変更を行う」とは言っていません。

また、「こうやってローテーションを気軽に変えて、次は何をしでかすかわからない」と不安になる方がいらっしゃることも承知しています。年2回に変更すると発表した2014年までスタンダードのローテーションは変更されたことがなく、しかもわずか2年でまた変更となったのですから、不安に思われるのもごもっともです。
しかしながら、今回の変更はまた新しい方針を打ち出したわけではありません――元に戻るのです。私たちは全体的により良い環境になると思って変更を行いました。ですがプレイヤーの皆さまから寄せられたフィードバックを精査すると、その変更ではうまくいかないと気づきました。そこで皆さまのご意見を真摯に受け止め、スタンダードのローテーションは以前の形に戻ります。
※傍線筆者


MTGに限らず、長期的にプレイされるゲームの運営って、一度運営に不信感持たれたら相当厳しいと思うんですよね。「1つのゲーム/1つの連綿と持続する個体としての開発」という認識をするので、例えばパッケージのテレビゲームであれば「『その作品/開発』が悪かった。同じ会社でも別のソフトは開発者も違うし同じように酷いとは限らない」と考えることができますが、MMOやMTGのようなゲームは「同じゲーム」が続いているわけですから、たとえいくらアップデートを繰り返そうが過去の失敗の呪縛を受けてしまい、一度信頼を損なうとそこから再獲得するのは至難の業になります。


■アモンケット問題
既に開発されているセットは年2回のローテーションを前提とした調整がされていると思われるので、
我々が世界をめぐる順番は、諸君とほとんど同じである。大きな違いは、我々は諸君が手にするよりも2年早く作業しているので、2年早く体験しているということである。

DTKでローテの巻き戻しを決めたとしても、今から半年後までのセットは変更前のローテを前提に調整されていることになり、アモンケットはスタンのバランスが歪になる恐れがあります。
どの程度まで修正猶予があるのか分からないので、普通に調整が間に合った可能性も大いにありますが。






色々言ってきましたが、カード使える期間が伸びたのは喜ばしいですし、最高の調整を施してくれる可能性もありますし、1プレイヤーとしては最悪スタン辞めれば良いだけなので、これからのWotCを《Always Watching》していきたいと思いますまる

コメント

20140419
2016年10月22日3:37

理路整然とまとめられてて凄く読み応えがありました。

エノキ
2016年10月22日21:24

>20140419さん
ありがとうございます。あまりネガティブなことを言うのは良くないですが、今回はちょっとオイオイと思ったので…

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