【翻訳】スタンダードの直しかた byブライアン・デマース
【翻訳】スタンダードの直しかた byブライアン・デマース
サイゲの一件で腹が立ったので引っ込めようかと思いましたが、折角訳したので放出することにしました。モッタイナイヨクナイ。
ちょくちょく参照画像がありますが、画像見なくても別に大丈夫です(画像見た方が理解しやすくはなると思いますが)。
原文:How to Fix Standard By Brian DeMars
http://www.channelfireball.com/articles/how-to-fix-standard/

以下訳



 月曜の禁止改訂ではどのフォーマットにも禁止はなかった。エターナルでは禁止はないと踏んでいたが、スタンダードでは何かしら禁止されるだろうと思っていた。どうやら機を逃してしまったように見える。


僕は猫派じゃない

 《守護フェリダー》(もしくは《サヒーリ・ライ》)が禁止されるのを見たかった。コピーキャットコンボがロケットに乗せられて宙高く打ち上げられて二度とスタンダードに戻ってこないのを見たかった。

画像①

 お手軽2枚「揃えば勝ち」コンボはスタンダードでは強すぎる。マルドゥは(僅差ではあるが)ベストデッキかもしれないが、コンボの存在がマルドゥを大いに利している。
 マルドゥに有利なアーキタイプは幾つもあるが、それらはコンボに対してあまりにも脆弱なために土俵に上がれないんだ。イシュカナは対マルドゥには素晴らしいカードだが、コントロール向きの重いカードはこの環境では駄目だ。なぜなら一度タップアウトすると、1グーゴルプレックス(10の10の100乗乗。つまり滅茶苦茶多い)もの生まれたての子猫ちゃんが押し寄せてきて、数匹の蜘蛛じゃとても足りないからね。
 僕が気になるのはサヒーリコンボがスタンダードからいなくなるかどうかであって、ギデオンやキランの真意号が壊れても涙を流すことはないだろう。しかしサヒーリコンボをスタンダードから取り除くことは更なる選択肢を提供すると強く信じている。


なぜ今禁止すべきだったのか

 今禁止する、後で禁止する、決して禁止しない。結局どれか選ばなくてはならないんだ!
 理想の世界ではDCIはカードを禁止する必要なんてないが、僕らがいるのは現実の世界で、理想の世界じゃない。
 後で禁止することの利点として、DCIがフォーマットをより観察する時間を得ることと、もしかしたら次のセットのカードが問題を和らげてくれるかもしれないってことがある。更に禁止を後回しにするということは禁止しないという理想的な選択肢を手にするということでもある。
 最高のシナリオ(問題が自然と直る)が存在する一方で、現実ではコピーキャットは勝手に消えるような類の問題ではない。DCIがフェリダーを禁止することは大いに意義があると僕が考える理由は2つある。

1.環境はどうやったってつまらなくなる

 今度のスタンダードは楽しく、良いフォーマットだなと思ったよ。週ごとにあるデッキから別のデッキへとメタが移り変わったしね。しかし今や埃が積もりパズルはすっかり解かれてしまった。
 SNSで行われたある議論に少し僕も加わったんだけど、そこで僕はスタンダードの本質的な問題について考えさせられたよ。結局僕はこのスタンダードが好きだし、「倒すべきデッキ」が週ごとに変わるのも最初の1カ月くらいは楽しめた。しかし多くの人が情報を共有し一つのフォーマットをプレイしてるこの時代においてフォーマットをしばらく解明しないようにすることは可能なのか?
 以下がその議論だ。

ブライアン・デマース「分かってるよ!文字通りそれと同じことを言ったし、とても相互作用に満ちていて決断が重要なゲームだって指摘したんだ。でも皆肩をすくめて『分かんないな。スタンはクソだよ』って言うだけだ。これ以上何を望むんだよ?笑」

エリック・フローリッヒ「スタン環境は全くもって悲惨だけど、ゲーム自体はとても駆け引きがあるよ。もし勝ちたいなら2つしか選択肢がないし、多様性の欠如は酷いものだけどね。(確かに他のデッキでも勝てるには勝てるが、同じように勝てるかと言うと怪しいと思う)」

パウロ・ヴィター「僕はそんなに駆け引きがあるとは思えないな……僕が見る限り多くのゲームはマナの問題で決着がついているし(一番人気のデッキが3色アグロだからね)、ミラーマッチだと先手がとても有利だ。それでもって4キルコンボもあるときた。確かに良いゲームもあるだろうけど、一度『色事故していないか?』『後手で素晴らしいハンドか?』の壁にぶち当たると、その壁を乗り越えるのはこのフォーマットでは非常に難しい」

ブライアン・デマース「発売から2ヶ月程度で2つもしくは3つのデッキに収束してスタンダードが『解明される』のは多分不可避なんじゃないかと思えてきたよ。これだけ色んな情報を見れる世界になって、そこに行きつくのはしょうがないんじゃないかな。
 もう一つ言いたいのは、フォーマットの価値はそれが解明されるかどうかでも、最後にどう見えるかでもなくて、全体の流れがどうだったかだと思う。メタゲームは流動的だったし週ごとに変わっていった。どう転んでいくか全く分からなかったんだ。この特定のスタンが悪かったんじゃなく、スタンダードというフォーマットが新セット前には辿り着く普遍的な問題なんじゃないかと思う」

エリック・フローリッヒ「いやいや、こんな事態は避けられるよ、当然さ。絶対プレイしなきゃいけない幾つかの壊れカードをただなくせばいいだけだ。他のフォーマットみたいにね」

コービン・ホスラー「FNMで勝てるレベルのティア2デッキは5~6個あって、99%のプレイヤーはそうやってスタンに取り組んでるということを君は見逃してるよ」

ブライアン・デマース「エリック、君が思う良いスタンダードはいつなんだい?」

エリック・フローリッヒ「最近まさに同じことを自問したんだけど、思いつかなかったな……問題はまさに君が指摘したようにプレイヤーが環境をすぐに解明することにあると思う。これは解決可能な問題ではあるけど、WotCが解決するようなものではないし、必ずしも解決すべきものではないかもしれない。超強力なカードを刷ることは売り上げに大いに貢献するだろうけど、勝ちたきゃそういうカードを絶対使わなきゃいけないから環境は硬直する」

パウロ・ヴィター「コービン・ホスラー君、僕らはそれを知ってるよ。見逃してなんかいない。ただ『このスタンはプロレベルでプレイする/観戦する/デッキを作るのには詰まらない』ということへの反論には、必ずしもなっていないんじゃないかってことさ。多くの絶対的に退廃していないフォーマットはFNMレベルではこの多様性を保っている。なのでそういう多様性を達成することはプロレベルでの多様性が酷いことへの『言い訳』にはならないよ。それらは両立可能なんだ。
 君が霊気紛争のスタンダード全体の過程をどう感じようと、僕らはもう環境解明に行きついてしまっていて、今やるべきことは殆ど残っていないということについては全員同意できるだろう。
 もしDCIが禁止を出したなら、それはメタゲームを変動させるし、プレイヤーとデッキビルダーにとって踏破すべき全く新しい世界を作り上げるだろう。もう一ヶ月マルドゥ対サヒーリばかりの試合に文句を言わせるのでなく、新しいメタゲームを作り上げ、読み解こうとして非常に楽しいことになっただろうね。
 僕はこういう禁止はマジックの良い点だと思っている。『死んだフォーマット』を活気のあるものに変えてくれるからね。誰も今のスタンをあと数ヶ月もプレイしたいなんて思わないだろうし、禁止すれば一度は死んだスタンにまた興味を持ってくれるだろう」


2. 禁止は正しい文脈でスポイラーを見直させてくれる

 このまま次のセットのリリースを待つより今禁止をすべきもう一つの理由として、次のセットのスポイラーを新たな視点で見れるというのがある。今後数カ月スタンダードで起こることによっては、僕らはスポイラーを「へえ、コピーキャットが禁止『だったら』この新カードはすごく良かったね」と言いながら眺めてるかもしれない。
 また、もし将来コピーキャットがスポイラー期間中に禁止されるだろうというデータが出たらどうなるだろう?「全てのカードを2つの別の文脈で見直さなければならないのか?コピーキャットがいるかいないかで?」少なくとも今何かを禁止しておけば、次の環境がどうなるかと言う点において今の立ち位置を知ることはできる。


スタンダードは再考されるべきだ

 チームメイトのカイル・ボージェムとスタンダードと禁止について話したんだけど、そこでカイルがスタンダードの本質について鋭い指摘をしていたのでここで紹介するよ。
 スタンダードの問題その一はミッドレンジが良すぎるということだ。ミッドレンジが全然駄目だった時に、僕はミッドレンジとミッドレンジが大好きな人達を馬鹿にしていたんだけど(本当さ)、今や時代は変わりミッドレンジがスタンダードの王となって随分経つ。
 ミッドレンジが強すぎるのは、それがウィザーズがここ数年作り続けてきたカードの影響をモロに受けているからだ。ミッドレンジ向けのカードがただひたすら他のカードよりも良質なんだ。ハッキリさせておきたいんだが、マルドゥ機体はアグロのミッドレンジだし、BG巻きつき蛇は純粋なミッドレンジで、サヒーリデッキはコンボを備えたミッドレンジだ。
 マルドゥはアグロでサヒーリはコンボ、BGはミッドレンジの三竦みメタゲーム何て言われるが、実際はどれも全てミッドレンジでゲームプラン立てている。
 除去でもあり生き残れば能力を使いまわせて時にはゲームに勝たせてくれるパーマネントをプレイできる時に、どうしてただの除去スペルを使わなきゃいかないんだ?
 特にPWはクリーチャーやその他のスペルよりもスタンダードでは遥かに強力だ。PWは
盤面にすぐさま干渉し、死なない限りその後のターンもアドバンテージを生み出し続け、すぐに対処されなければPWだけでゲームを完全に掌握してしまう。

画像②

 ギデオンが良い例だ。こいつは比較的軽いコストにもかかわらず多様な働きをして、すぐに対処しないと数ターンで相手プレイヤーを倒してしまう。対処し辛く、適切に回答するのが不可能と思うのも当然だ。
 もし僕の目的が出来るだけ多く勝利することだったら(実際そうだ)、これらの(A)「非常に効率がよく、階級無視で非常に強力」で(B)「他のカードに簡単に対処されたり咎められるものがない」カードを使わない理由はない。
 この硬直した2デッキメタゲームに行きついた大きな理由はミッドレンジのような特定の戦略が、効率的で強力なカードを上手く使えるが故に、他の戦略よりも単純に優れているからだ。


「楽しくない」戦略を戻せ

 フェイスブックでエリック・フロードリッヒにした質問「一番いいスタンダードは何だった?」をカイルにも訊いてみたところ、カイルはすぐさま非常に説得力のある理由付きでラヴニカ/神河だと答えてくれた。
 カイル曰くラヴニカ/神河が素晴らしかったのは文字通り終わりがないくらい色々なことをプレイヤーは出来たからで、それはウィザーズが「楽しくない」カードを刷るのを恐れなかったから可能だったという。当時は全ての種類の不愉快なデッキがあったし、馬鹿みたいに強い壊れカードも同じくらいあったんだ。
 パッと見、不愉快なデッキや壊れカードは良くないように思える。しかしそれによってプレイヤーはあらゆることを出来る選択肢を手にしていたんだ。

画像③

 《猛烈に食うもの》ポンザ、《春の鼓動》コンボ、《けちな贈り物》ランプ、太陽拳コン、UGテンポフラッシュ、Zooアグロ、オルゾフミッドレンジ、ハウリング・オウル、など枚挙に暇がない。
 強力なカードばかりで、マナ基盤も上質だったのでプレイヤーはやりたいことを全部やれたんだ。特定の理想的なプレイ体験(ミッドレンジ)に焦点を当てるのではなく、ゲームプレイ全体に多様な可能性を促進するようにカードがデザインされていた。
 僕はアナリストが何らかの表を見て「どうやらミッドレンジでプレイするのが好まれているようだな。ランデスは嫌われているようだ。カウンタースペルも嫌われているようだ。ロックデッキも嫌われているようだ」と言ったんじゃないかと思うよ。そして開発は好ましくないアーキタイプ全てを排除しほしいものを与えるという最も論理的な帰結に辿り着いたわけだ。

画像④

 問題はプレイヤー自身が本当に何を望んでるのかしばしば分かっていないということだ。確かに、短期的には人々は何であれ負ければイラつくだろう(そもそも土俵に上がっていないかのような負かされ方をしたならなおさらだ)。しかし僕は問いたい「2つのミッドレンジしかトップメタにいない硬直したメタゲームの方が本当に優れているのか?」と。
 これは誰に尋ねるかによって大分違う答えが出るだろう。ああいった戦略がプレイヤーに人気かどうか知るにはモダンが格好の例だ。モダンには全て(もしかしたらそれ以上)がある。ああいった「不人気な」戦略全てが存在しそれを実際目にすることができるんだ。ランタンのようなプリズン、ストームのような速いコンボ、RGポンザ、そしてもちろんカウンター満載のデッキもなんでもござれだ。多くのプレイヤーが嫌いなカードについて不平を漏らすが、実際はプレイヤーはモダンを愛しているしモダンは不平が絶えないにも関わらず成長し盛り上がっているんだ。


子供だましの施策はやめろ

 もし僕が開発だったら、子供だましはやめて違った戦略が存在できるようなカードを刷ることでスタンダードを立て直そうとするだろうね。もし戦略の多様性とダイナミックなプレイ体験がゴールなら、もっと色々な選択肢があるべきだ。どう見たって「強い」カードトップ5が全部ミッドレンジ向きであるべきじゃない。
 今キミが何を思ってるか分かるよ「もし今後さらに情報化が進んで、環境が解明されたとき、ミッドレンジがベストな戦略という代わりに2つの更に楽しくない戦略がトップメタになったどうするんだ?」
 良い質問だ!表面的には、トップメタが2つしかないメタゲームでも、少なくとも4Cサヒーリ対マルドゥは面白いし駆け引きのあるゲームを後押しするだろう。一方でランデス対コントロールは多くのプレイヤーにとって楽しい体験とは言い難いだろう。特にこういったデッキはFNMのようなカジュアル層への受けが極めて悪い。
 僕の答えはこうだ。ゲームデザイナーをゲームの一部が「立ち入り禁止」になっているような箱に押し込めるのではなく、彼もしくは彼女たちのやりたいようにやらせる。ウィザーズには素晴らしいプレイヤーやデザイナーがいるし、僕は彼/彼女たちが何とかすると信頼している。開発チームが挑戦し続ける限り、スタンダードでどんな問題が起こったとしても僕は彼/彼女らのミスを受け入れるだろう。
 これの問題はここ最近のスタンダードより悪い、末期のフォーマットになるリスクがあることだ。しかしそうは言っても、ここ最近のスタンダードがそこまで酷くはないにしても素晴らしいとは言い難いのも事実なわけで、スタンダードをもっともっと良くする余地は確実にあると思う。


翻訳終わり

コメント

ハリー
2017年3月18日0:32

いっそ画像結合ソフト使うかですね

シグマ@dj-SIGMA
2017年3月18日0:47

>ひ
自分はそれが理由で、有料サーバー借りて好き勝手に演出やってます(笑)

エノキ
2017年3月18日10:18

>ハリーさん
一応ちょっと使ってはいるんですよね……

>シグマ@dj-SIGMAさん
羨まC とはいえシグマさんみたいにドンドコ翻訳できないので僕が使っても持て余しそう。

nophoto
たん
2017年3月26日21:29

個人的には、伝説カードを全て1枚制限が良いと考えます。
カード高騰により、一部のプレイヤーしか入手出来ないのは、せっかくのストーリー展開をみんなが楽しめないという考えです。

nophoto
たん
2017年3月26日21:37

あと、プレインズウォーカーも1枚制限。

エノキ
2017年3月26日23:40

>たんさん
伝説ではないですが、デュエルズではレアリティで枚数制限(神話1レア2アンコ3)されてますね。ただ今のまま枚数制限をすると特定のカードを引けた/引けないに終始してしまうので、結局汎用性の高いパワーカードと弱いカードの差を縮めるしかないのかな、と思います。

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