霊気池といえばすっかりティムールですが、アグロデッキでたまに当たって悶絶するのはスゥルタイ型。第一人者のリード・デュークの解説です。
原文:Sultai Marvel by Reid Duke
https://www.channelfireball.com/articles/sultai-marvel/

以下訳



 《霊気地の驚異》がスタンダードで最も強力な戦略の一つ(そして単体のカードとしてもベストカードの一つ)というのは広く知られたところだが、だからといってそれが完璧ということじゃない。安定性に欠けるし、酷くやっかいなドローに悩まされがちだ。初手にウラモグが来て渋々キープしたら、最初のドローで追加のウラモグを引くなんてことが何回もあって、従来の構築は僕向きじゃないと悟ったよ。そんなわけで、もっと良い霊気池はないかと探し始めたんだ。
 僕が思うに、鍵は、もし引いてしまったとしてもキャストできるような強力な霊気池の「当たり」を選ぶことだった。《墓後家蜘蛛、イシュカナ》、《陰謀の悪魔》そして《害悪の機械巨人》は、スタンダードにおいて直面する様々な状況においてゲームを決める性能があり、特にこれらがインスタントスピードで出てきたら尚更だ。こういったカードでデッキを埋めることで普通の昂揚コントロールのように振る舞うことも出来るようになるし、不安定な戦略に一貫性を与えることができ、同時に様々な角度から攻め(守りも)が出来るようになる。《発生の器》や《ウルヴェンワルド横断》、そしてサイクリングカードによって君のデッキは油を十分にさした機械になる。
 アモンケットのリリース前にスゥルタイ霊気池をテストしたんだけど(https://www.channelfireball.com/videos/channel-reid-standard-sultai-marvel/)、僕が望むラインには到達していなかった。そしたら2つの大きな変化が、スゥルタイ霊気池をヘンテコでジョークのようなデッキから、トップメタにも負けないデッキに変えたんだ。1つ目の変化はもちろん――これは全ての霊気池デッキに当てはまることだけど――コピーキャットコンボの禁止だ。そして2つ目は《死の権威、リリアナ》の登場だ。
 このリリアナはこのようなスタイルのデッキがずっと待ち望んでいたカードだ。彼女は高い初期忠誠値を有し、自衛能力があり、長期にわたって価値を生み続ける強力なPWだ。さらに、強力なETBを有したゲームエンド級のクリーチャーと組み合わせれば、彼女はまさにデッキの立役者になる。アグロデッキでイシュカナと蜘蛛トークンを乗り越えるのは至難の業だ。しかしちょっと想像してみてくれ。今やアグロがリソースを注ぎ込んでイシュカナを一度退けたとしても、君がこのリリアナをプレイすればイシュカナをリアニメイトできるんだ!そうなると今度は壁となるブロッカーと、その後ろにPWまで鎮座するわけだ!同じように、《害悪の機械巨人》を再利用するのも最高だし、運が良ければ《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を墓地に送り込んだ後に、4~5ターン目にしながら直接戦場に出せるかもしれない。

スゥルタイ霊気池

土地22
4 《霊気拠点》
4 《花盛りの湿地》
4 《植物の聖域》
4 《森》
3 《沼》
2 《進化する未開地》
1 《島》

クリーチャー15
2 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
4 《導路の召使い》
4 《ならず者の精製屋》
2 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》
2 《陰謀の悪魔》
1 《害悪の機械巨人》

呪文23
4 《霊気との調和》
4 《致命的な一押し》
3 《発生の器》
2 《ウルヴェンワルド横断》
2 《織木師の組細工》
1 《造反者の解放》
4 《霊気池の驚異》
1 《ヤヘンニの巧技》
2 《死の権威、リリアナ》

サイドボード15
2 《不帰+回帰》
4 《光袖会の収集者》
2 《否認》
2 《没収》
2 《不屈の追跡者》
1 《刻み角》
1 《ゲトの裏切り者、カリタス》
1 《ヤヘンニの巧技》


 このデッキを使用したPTアモンケットは20位だった。最後の2ラウンドは(多分)TOP8がかかっていて、それに負けてしまったんだ。しかしマルドゥ機体や多くのクリーチャー主体のデッキ、さらにはゾンビや霊気池に対しても有利に感じたよ(対霊気地はメインは微不利でサイド後は微有利)。


キーカード
 
《霊気池の驚異》:「オールイン」型の霊気池デッキでなくとも、このカードは依然として最高のドローだ。《絶え間ない飢餓、ウラモグ》をめくることが出来れば4ターン目に勝利できるし、対アグロであればイシュカナや《陰謀の悪魔》でも良い。もしくは長期的にアド源として使っても十分に対戦相手を苦しめることが出来る。

《ならず者の精製屋》:「スゥルタイ」霊気池は実際のところただの《ならず者の精製屋》に手を広げた緑黒昂揚だ。精製屋はそれほどの価値があるカードで、重要なエネルギー供給源でもあるから、基本的には常に何枚でも引きたいカードだ。

《霊気との調和》《導路の召使い》《霊気拠点》《織木師の組細工》はエネルギー供給を担っている。スゥルタイ霊気池はティムール型よりエネルギーの生成が得意ではないが、その代わりに強力なプランBを持ち合わせているし、それは即ち《没収》で身動き出来なくなることはないということだ。加えて、霊気池の誘発型能力でも多くのエネルギーを得ることが出来る。

《絶え間ない飢餓、ウラモグ》にアクセスできるということは重要だ。確かに手札に2枚来てしまったら最悪だが、ロングゲームであればいつかはライブラリーや墓地にあるウラモグを探し当てたいという時が来るからね。

《墓後家蜘蛛、イシュカナ》は君をクリーチャーの攻撃から守ってくれる。イシュカナは昂揚をデッキの軸に据える最大の理由だ。

《陰謀の悪魔》は幾つかのマッチアップでパワーレベルがウラモグと競合するが、同時に6マナで容易にキャストできるというメリットがある。この悪魔をインスタントスピードでキャストするのはスタンダードで最も楽しい瞬間の一つだし、スゥルタイ昂揚の大きな魅力でもある。この悪魔はゾンビとマルドゥ機体の両者に対して最高のカードの一つで、実際、これに回答されないゲームは100%勝つだろう。クリーチャーが死亡した時にエネルギーを得られることと、自分の墓地だけでなく対戦相手の墓地からもクリーチャーをリアニメイト出来るということを覚えておこう。

《死の権威、リリアナ》:彼女のことは既に褒めちぎったね。リリアナとイシュカナはピーナッツバターとジャムみたいなものだ。(※訳者注:ピーナッツバターとジャムのサンドイッチは英語圏では非常にポピュラ―な間食)彼女はスゥルタイ霊気池に完璧にフィットしているんだ。

《致命的な一推し》はスタンダードで最高の防御的除去だ。《キランの真意号》と《墓所破り》がいる限り、これを4枚デッキに採用せずに家を出るべきじゃない。

《発生の器》《ウルヴェンワルド横断》はデッキの潤滑油だ。器は昂揚のみならず悪魔とリリアナのためにも墓地を肥やしてくれるし、また《霊気地の驚異》に辿り着けるようにデッキを掘り進めてもくれる。


選択肢となるカード

《害悪の機械巨人》は《陰謀の悪魔》や《墓後家蜘蛛、イシュカナ》ほど重要ではないが、厳しい状況から救い出してくれることがあるし、緑中心のクリーチャーデッキに対しては絶対的に最高のカードだ。もし緑黒系が人気になったら、このカードをメインとサイドに複数採用するように助言するね。

《ヤヘンニの巧技》はゾンビ対策だ。しかし、このカードがあって嬉しいマッチアップや状況はとても多い。このデッキではインスタントスピードで唱えられる可能性があるから、さらに価値は上がる(クリーチャーやソーサリーでさえ、このカードを霊気池で当てることが出来れば、手札からインスタントスピードでキャストできる)。

《造反者の解放》は低コストで昂揚達成に貢献するだけでなく、マルドゥ機体や霊気池デッキに対して素晴らしい働きをする。このカードをあと1~2枚追加できる枠があればな、と思うよ。

《不帰+回帰》:時にはギデオンや大きなクリーチャーを倒す手段が必要になることがある。75枚の中に《不帰+回帰》があるというのは良いことだ。


小技

霊気池起動を迷ったら、対戦相手の攻撃ステップに。《陰謀の悪魔》と《ヤヘンニの巧技》は対戦相手のターンにキャストが最も効果的だ。また、不確定要素は対戦相手に選択を迫る。

《導路の召使い》のトレードを恐れるな。手札に《霊気池の驚異》がある場合は特に。温存しておけるほどエネルギーは余らないからだ。

《霊気との調和》と《ウルヴェンワルド横断》は大抵沼をサーチする。《陰謀の悪魔》は黒のトリプルシンボルだし、1ターンに複数の黒いスペルをキャストしたい状況は多いからだ。しかし、《発生の器》は緑が濃いカードであり、器をキャストして即起動したい状況を作りたくなるということに注意だ。

ゾンビを《陰謀の悪魔》や《ヤヘンニの巧技》の効果圏外へ逃れさせるな。ライフを守りたくても、時として早いターンにゾンビを倒すことについては注意が必要だ。4/4の《戦墓の巨人》を倒すのは骨が折れるからね。同様に、貪欲になるあまり《ヤヘンニの巧技》を温存し過ぎないように。追加のロードで範囲外へ逃げられるし、《精神背信》でハンデスされるかもしれない。

複数の《織木師の組細工》や《絶え間ない飢餓、ウラモグ》、もしくは《霊気地の驚異》1枚をサイドアウトする戦略を覚えておいて損はない。これは対戦相手が《没収》をサイドインするのであれば非常に効果的だ。


マッチアップとサイドボード

ティムール霊気池

 ティムール霊気池はこちらより多くのウラモグとエネルギーを備えているから、プランAでは相手の方が上だ。しかしプランBはこちらの方が優れているし、サイド後はプランAよりもプランBを巡る戦いになる。もし両プレイヤーがパーミッションスペルとアーティファクト破壊満載になった場合は、《光袖会の収集者》や《不屈の追跡者》が簡単にゲームをかっさらっていくだろう。加えて、黒は《没収》が使える。

大まかなサイドボーディング
Out
2《織木師の組細工》
4《致命的な一押し》
3《発生の器》
2《墓後家蜘蛛、イシュカナ》
1《陰謀の悪魔》
1《死の権威、リリアナ》
In
2《没収》
4《光袖会の収集者》
2《不屈の追跡者》
2《否認》
2《不帰+回帰》
1《刻み角》


ティムール側が《不屈の追跡者》のようなクリーチャーをサイドインしても驚いてはいけない。《不帰+回帰》と《害悪の機械巨人》は良い保険になる。


ゾンビ

 ゾンビは不安定なマッチアップだ。《墓所破り》に回答できなければそれだけで負けるし、ロードを並べて全体除去範囲外に逃げられても負ける。こちらが勝つのはこういった状況でない時だ。イシュカナと陰謀の悪魔、それらに付随してくるクリーチャーがあるから、《戦慄の放浪者》や《無情な死者》などの継続的な攻めにヒヤヒヤすることはない。これはスゥルタイ霊気池がティムール霊気池や完全なコントロールデッキより大きく優れている点だ。

大まかなサイドボーディング
Out

2《織木師の組細工》
1《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
1 《造反者の解放》
In
2《不帰+回帰》
1《ヤヘンニの巧技》
1《ゲトの裏切り者、カリタス》


《ゲトの裏切り者、カリタス》は、相手が除去の数を減らすであろうサイドボード後に素晴らしい働きをする。《ヤヘンニの巧技》はおそらく初手にあったら最高のカードだが、ゲームの後半の厳しい状況でも常に助けになるとは限らない。なので《不帰+回帰》や《害悪の機械巨人》といった確定除去で多様な状況に対応できるようにすることが重要だ。


マルドゥ機体

 PTアモンケットで僕がスゥルタイ霊気池を選んだ主な理由の一つが、他の霊気池よりもこのデッキの対マルドゥ機体が気に入っていたからだ。《致命的な一押し》は相手の速い攻めを捌くのにこれ以上ないカードで、《墓後家蜘蛛、イシュカナ》は地上クリーチャーも飛行クリーチャーも、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》でさえも一度に止めて、盤面を安定させてくれる。先手で相手にブン回られると負けたりもするが、基本的にはこちらが有利なマッチだ。

大まかなサイドボーディング
Out

1《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
1《害悪の機械巨人》
1《死の権威、リリアナ》
1《ウルヴェンワルド横断》
In
1《不帰+回帰》
1《刻み角》
2《不屈の追跡者》


 トップメタの中では、対マルドゥ機体は最もサイドボードが流動的なマッチアップだ。相手の《経験豊富な操縦者》《ピア・ナラー》《異端聖戦士、サリア》の数によって《ヤヘンニの巧技》は0~2枚まで変動する(このマッチアップでサリアは最も厄介なカードの一つだ)。もし相手が《没収》を入れてくると思うなら組細工と霊気池の数を調整してもいいが、相手がそうするという確信がない限りは僕はやらないだろうね。
 《不屈の追跡者》のサイドインは奇妙に見えるかもしれないが、マルドゥには山ほど強力なパーマネントがあり、イシュカナで盤面を安定させた後にゲームに勝てるようにアドバンテージを確保しておく必要がある。加えて、《精神背信》や《没収》で手札をズタズタにされた時にも追跡者は役に立ってくれる。


結論

 スゥルタイ霊気池は霊気池としての強みだけでなく、強力なプランBも持ち合わせており、すなわち高いレベルでの一貫性もある。対戦相手が一般的な霊気池デッキを打ち倒すために用いる策の多くは、このデッキにはそこまで有効ではない。
 ゾンビとティムール霊気池はPTアモンケットで勝ち組だった――ああいったデッキとのマッチアップは構わないが、楽しいものではない。しかし、マルドゥ機体と緑黒巻きつき蛇といったデッキは依然としてまだ存在しているわけで、スゥルタイ霊気池はそういったデッキを狩るのに最高の選択だ。



訳終わり

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